内田朝子会員(豊田市矢作川研究所)の論文がLimnology and Oceanography Methodsに掲載されました。河川の一次生産を測定する新しい手法の提案とその検証です。調査地は矢作川中流域です。論文はオープンアクセスにはなっていませんので、別刷りを希望される方は内田朝子会員にE-mailにてお問い合わせください。
論文掲載web site:https://aslopubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/lom3.70003
内田朝子会員:https://www.yahagigawa.jp/staff/uchida.html
論文要旨
河川環境の保全を目的にした生態系の代謝速度を算出するには,精度の高い河床の一次生産量(GPP)と生物群集の呼吸量(ER)を把握する必要性がある.近年用いられているO-CMMは,大気と河川水間の酸素移動速度を推定する必要があり,精度に課題がある.これを克服するためには,河川水中に大気と遮断した水塊を作る必要がある.そこで,本研究では,透明シートを用いた水中トンネルを作成することで,酸素の移動速度が不要なGPPとERの測定手法を開発した.透明トンネル法で得られた河川中流域のGPPは,夏には平均6.59 g C m–2 d–1,冬には平均4.65 g C m–2 d–1,ERは,夏には平均3.46 g C m–2 d–1, 冬には平均2.77 g C m–2 d–1であった.この呼吸量は実験的手法の明暗瓶法および袋法の6倍から数十倍の高く,Open-channel metabolism methodの既往値に近かった.透明トンネル法は,河床全体の生物群集の呼吸量を反映していた.本透明トンネル法は,酸素移動速度が不要であり,生態系の代謝を1つ少ない項数で推定できる精度のよいGPPとERの算出が可能である.